『ドゥームズデイ・ブック』

正直読み始めはよく分からなかったのです、長編初読の女性作家、コニー・ウィリスの凄さ/よさが。

なんというか、実にもどかしいのです。物語の冒頭からしばらく!(実質上巻読了くらいまで続く..) 何が?というと、「結局何がどうなってるんだよぉっ!!」って部分の作者の極悪な演出が。原因不明で倒れた技術者のうわ言を何度も何度も何度も!聞かされて、それがどうしたんだよ!早くはっきりさせろよ!という気持ちがどうにも大きくなって..読んでいて辛かったです。

後半に明らかになる「実際に起きた事柄」はなんというか実に、ある意味陳腐だったりするのですが。実際タイムスリップした女性主人公に最初に起きたことについては、誰もが普通想像するんじゃないかなーと思うようなことが、結局のところ実際に起こっていたってことだったりするので。

でもその陳腐な物語が!SFとしてはS(科学)の弱い、ストーリーテリングに偏りがちな筋立てが!細やかな人物描写が!実に凄い。確かに凄い。読み終えたときには後書きにおける訳者や解説者による絶賛調を素直に受け入れられる。ドゥームズデイ(審判の日)という不吉な名前の「日記」が、読み進めるごとに、じわじわと存在感を増していく..

読み手としては21世紀編の全体的な明るさが好きです。救いでもあります。特にダンワージー先生の他者に示す優しさ(コリンのクリスマスを案じる姿が素敵っす)、そしてコリンの底なしのバイタリティーと明るさが最高!なんというか、分かるのです。緊急時に妙に盛り上がって、日常生活そっちのけで結構楽しく振舞えるヒトの気持ちが。尤もコリンはいつでもどこでもあんなテンションなのでしょうが..

これは、凄い物語でした。設定のチープさ(失礼!)と表紙絵のアレさに敬遠していた(自分では比較的ハードSF読みだと信じているので..)ことが恥ずかしい。これは、ストーリー重視SFの極北にある作品です。

SF読みに限らず、物語を読むヒトならこの程度のSF設定は超えられると思います。